

今日はこんな疑問に答えていきます。
- 内定と内々定の違い(早見表でひと目で分かる)
- 内々定とは何か・内定が出る時期
- 内定辞退は可能か、訴えられることはあるのか
- 角を立てない内定辞退の伝え方
「内々定をもらったけれど、内定と何が違うのか分からない」「第一志望ではないので辞退したいが、訴えられないか不安」——2027卒の就活でも、こうした声は毎年多く聞かれます。
結論から言うと、内定と内々定は法的な意味合いが異なり、どちらの場合でも辞退で訴えられることは基本的にありません。
まずは違いを早見表でつかんでから、ひとつずつ丁寧に解説していきます。
目次
内定と内々定の違い【早見表】
内定と内々定は混同されがちですが、法的な位置づけ・出る時期・取り消しのリスクまで含めて整理すると、違いがはっきりします。一般的には次のように整理されています。
| 比較項目 | 内定(採用内定) | 内々定 |
|---|---|---|
| 定義 | 採用が正式に決まった状態。一般的に労働契約が成立しているとされる | 「内定を出す予定」という事前通知。一般的には正式な労働契約は未成立とされる |
| 法的拘束力 | 解約権が留保された労働契約として、一定の拘束力があるとされる | 口約束に近く、拘束力は弱いとされる(ただし一定の保護はあるとされる) |
| 出る時期 | 就活ルール上、卒業前年の10月1日以降が一般的 | 選考終了後すぐ。早ければ6〜8月ごろに出ることもある |
| 取り消しリスク | 企業側からの取り消しは厳格に制限されるとされる | 内定より広い範囲で取り消しが認められやすいとされる |
ざっくり言うと、内々定は「あなたを採用する予定です」という事前のお知らせ、内定は「採用が正式に決まりました」という確定の通知、というイメージです。
では、それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。
内々定とは
内々定とは、一般的には企業が「内定を出す予定です」と事前に伝える通知を指します。就活ルール上、内定の正式な解禁日は卒業前年の10月1日以降とされているため、それより前に採用を決めた企業が、学生をつなぎとめる目的で出すことが多いものです。
法的には、内々定の段階ではまだ正式な労働契約は成立していない一応の口約束と解釈されるのが一般的です。ただし、まったく無保護というわけではなく、内々定を不当に取り消した企業が損害賠償を命じられた裁判例もあり、一定の保護はあるとされています。
時期の感覚としては、内々定は選考が早く終わる企業ほど早く出る傾向があり、早ければ卒業前年の6〜8月ごろに通知されることもあります。「内々定をもらったけれど10月まで内定が出ない」というのは、こうしたスケジュールの違いによるものです。
内定とは(労働契約の成立)
一方の内定(採用内定)は、採用が正式に決まった状態を指します。採用内定そのものに限定した明確な法規制や法律上の定義はありませんが、判例上は次のように解釈されているのが一般的です。
少し難しい表現ですが、要するに内定が出た時点で、一般的には労働契約が成立しているとされるということです。だからこそ、企業側が一方的に内定を取り消すことは厳しく制限されます。
そして、この拘束力は学生側よりも企業側を縛る意味合いが強い点がポイントです。つまり内定と内々定の違いは、突き詰めると「内定を得た学生の立場が、法的にどの程度守られるか」の差だと言えます。
内定辞退は可能か・訴えられることはある?
ここが最も気になる方が多いところでしょう。結論から言うと、内定・内々定のいずれも辞退は可能で、辞退を理由に訴えられることは基本的にありません。
まず内々定の場合、強い法的拘束力はないとされるため、辞退してもまず問題になりません。
内定の場合も、一般的には次のように考えられています。内定は労働契約の成立とされるため、辞退は労働者からの「退職の申し入れ」にあたり、特別な理由がなくても、申し入れから2週間が経てば効力が生じるとされています(民法627条1項)。学生側には辞退(退職)の自由があるという考え方です。
では損害賠償を請求されることはあるのでしょうか。理屈の上では、辞退の仕方が信義に著しく反する(社会通念上ありえず、相手に大きな損害を与える)場合には損害賠償が問題になり得る、とされています。
ただし実際には、
- 内定辞退で学生側に損害賠償を認めた裁判例は、一般に知られている範囲では見当たらない
- 入社日前日に辞退して採用費用を請求された事案でも、賠償は認められなかったとされる
- 企業にとっても、辞退者を訴えることは費用や企業イメージの面で割に合わない
といった事情から、現実に学生が訴えられるケースはほぼないと考えてよいでしょう。
内定辞退の伝え方とマナー
訴えられる心配はほぼないとはいえ、社会人になる前のやり取りとして、最低限のマナーは守りたいところです。お互いが納得した形で就活を終えられるのが理想です。
ポイントはシンプルで、辞退を決めたらできるだけ早く連絡すること。手段は可能なら電話、難しければメールでも構いません。実際、企業側は電話での連絡を望む割合が高い一方、若手社員が実際にはメールで伝えるケースも一定数あるという調査もあります(2019年時点の調査)。
問題になりやすいのが、辞退を申し出ても強く引き止められる、いわゆるオワハラ(就活終われハラスメント)のケースです。電話での連絡が大きな精神的負担になる場合は、無理をせず、メールや問い合わせフォームなど文字に残る形で意思を伝え、それ以上は深追いしないという選択も致し方ありません。オワハラへの具体的な対処や、就活エージェント経由での違約金請求への対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。
複数社から内定・内々定をもらって「どこに決めるべきか」で迷ったときは、判断軸を整理してから決めるのがおすすめです。後悔しない選び方は次の記事にまとめています。
学生はとかく内定を多く保有したがりますが、最終的に行けるのは1社だけです。志望度が高くない企業まで「とりあえず」と受け続けると、後々の辞退連絡に余計な手間がかかります。受ける企業を絞り、辞退の負担を最初から減らしておくのが賢い立ち回りです。
企業からの内定・内々定の取り消し
ここまでは学生側からの辞退の話でしたが、逆に企業側から内定・内々定を取り消すことはできるのかも押さえておきましょう。ここでも内定か内々定かで扱いが変わるとされています。
- 内定の場合…取り消しは「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当」と認められる場合に限られるとされる
- 内々定の場合…内定よりも広い範囲で取り消しが認められやすいとされる
内定の取り消しが認められ得るのは、内定時に予想できなかった健康上・経歴上の問題や、企業の重大な経営上の事情などに限られるとされ、判断はかなり厳格です。加えて、昨今はSNSの普及で取り消しが企業イメージの悪化に直結するため、安易な取り消しは現実には起きにくいと考えられます。
内定・内々定は人生を左右する大きな決断にかかわるものです。辞退にためらいがあっても、違いと根拠を理解したうえで、自分の決断に自信を持って企業に連絡するようにしましょう。
よくある質問(FAQ)
A. 一般的には内々定が先です。就活ルール上、内定の解禁は卒業前年の10月1日以降とされ、それ以前に採用を決めた企業は内々定という形で先に通知することが多いためです。
A. 内々定は正式な労働契約が成立していないとされるため、辞退で訴えられることは基本的にありません。早めに連絡するというマナーだけ守れば問題ないと考えてよいでしょう。
A. 一般的には可能とされています。内定は労働契約の成立とされますが、学生側には辞退(退職)の自由があり、申し入れから2週間で効力が生じるとされています(民法627条1項)。ただし誠実に、できるだけ早く伝えることが大切です。
A. 理屈の上では信義に著しく反する辞退で問題になり得るとされますが、実際に学生側の賠償が認められた裁判例は一般に知られている範囲では見当たりません。過度に心配する必要はないでしょう。
【参考にした書籍】
朝倉むつ子・島田陽一・盛誠吾『労働法[第8版]』(2024年,有斐閣)
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