内定と内々定の違い。内定辞退で訴えられることはある?


内定を貰ったけど他の企業の方が良いから辞退しようかな!
大隈重信
そもそも内定と内々定の違いからして分からないのじゃが…笑
今日はこんな疑問に答えていきます。
この記事で分かること
  • 内定と内定辞退の違い
  • 内定辞退で訴えられることはあるのか

最近では、内定辞退セットが爆売れするなど内定辞退についての関心が高まっています。

結論から言うと、内定辞退で訴えられることは基本的にありません。

ただ、念のため意識しておいた方が良い知識があるので、この記事では分かりやすく解説していきたいと思います。

内定と内々定とは

そもそも内定と内々定の違いはご存知でしょうか?

内定と内々定は混同されがちですが、実は法的には違います

内定辞退が訴えられるかどうかを確認する前に、この違いを知ることが大切です。

内定と内々定の違い

採用内定についてに限定した明確な法規制や法的な定義はありませんが、判例によると下記のようなものになっています。

【内定と内々定の違い】
内定とは、学生の応募が契約の申し込みであり、内定通知を使用者の契約の承諾とみて、採用内定を誓約書記載の事由等の解約権が留保された労働契約の成立(大日本印刷事件・最2小判昭54・7・20民集33巻5号582頁)と解釈されている。

内々定とは、一般的には、未だ労働契約は成立していない一応の口約束と解釈されている。ただしその場合でも一定の保護がある。

教科書的には、内定と内々定の違いはこのようになっています。

このように、難しいことを少し書いてしまいましたが要するに簡単にするとこんな感じです。

  • 内定を貰った際には一応労働契約は成立するため基本的には社員の一員になる
  • 内々定の場合は、あくまで口約束だからそこまでしっかりはしていない状態

そして、この効果は就活生側と言うよりも企業側を拘束する意味合いが強いです。

つまり違いは、内定を獲得した就活生側の立場が法的にどの程度保護されるのかということになります。

内定辞退について

内定辞退については、基本的には企業側から訴えられることはありません。

ただし、上記で説明したように内定の場合は法的な拘束を企業側にもたらすため、著しく不相当な内定辞退の場合は企業側から訴訟を起こされることもあります。

また、そうでない場合にも最低限のマナーは守りましょう。

内々定の場合には、強力な法的拘束力をもたらさないので、辞退をしても全く問題はありません。

内定辞退が訴訟になるケース

繰り返しになりますが、内定を辞退したとしても99.9%は訴訟になりません。

なぜならそんなことをしても企業イメージを毀損するだけでメリットはほとんどないからです。

※企業が損害賠償として請求できるのはおよそ新卒採用にかかる費用と言われている100万円前後です。

どう考えても100万円より企業イメージの方が大事ですよね。

とは言ってもやはり心配な方のために、どのような場合に法的に訴訟を起こされるのかと実際の裁判例について見ていきましょう。

内定辞退の法的根拠

まず採用内定を辞退する場合について説明すると、そもそも内定は上記で説明したように労働契約の成立となるので辞退する際も通常通りの扱いになり、特段の理由は必要なく辞退から2週間後にはその効力が発生します。(民法627条1項)

ただし、ここで注意するべきなのは、内定の辞退がとても信義に反している(=一般常識ではありえないし相手に大きな悪影響を与える)場合には損害賠償が請求されることもあり得るということです。

では具体的に信義に著しく反している場合とはどのような場合なのでしょうか。

内定辞退の実際のケース(信義則違反)

そもそも内定辞退による損害賠償が認められた事例は調べた限り見つけることはできませんでした。

一方で、認められなかった訴訟としては、入社日前日に辞退をしたため採用内定に至る費用を請求されたものもありました。

以上のような、入社日前日での辞退ですら損害賠償請求は認められないとなるとおそらくほとんどの場合は辞退は可能であると思われます。

例えば中小企業で採用人数が1人だけで入社直前に付箋で辞退しますとだけ貼って辞めてしまった場合のように明らかにあり得なさそうな事例においては認められる可能性もあるとは思いますがそんなことも起きないと思うのでやはり企業側から学生側への訴訟は現実的に考えて難しいものになるでしょう。

マナー

以上のように訴えられることはないとしても、社会通念上のマナーはあります。

社会人の一員としてマナーを守ることで企業側と学生側双方に納得した形で活動を終えることができればいいですね。

可能であれば電話、そうでなければメールでも良いのでできる限り早く連絡するようにしましょう。

一部オワハラがある企業に対しては電話での連絡でさえもかなりの負担になるため、その際はメールでおくり、メールアドレスがない場合は最悪問い合わせフォームでも良いので文字に残る形で連絡をして後はコンタクトを取らないという形でも致し方ありません。

賢い就活の仕方
学生はとかく内定を多数保有したがりますが、多くの内定を持つことに喜びを得るようですがどうせ行けるのは1社だけです。私は数多くの企業を受けることを推奨し、自身も60社ほどエントリーしまし最終面接までも10社ほど行くことができましたが上手く時期をずらして受けなくていい企業の最終面接は行かなくていいようにしました。
志望度は高くないし、他からもらってるけど内定欲しいからとりあえず受けに行こうというのは後々辞退の手間がかかり非常に面倒なので無駄に内定を貰うことは避けた方が良いでしょう。実際に私の友人ももらうだけもらった企業の辞退に頭を悩ませていました。

ちなみに2019年6月16日の日本経済新聞には企業の66%が電話で20%が対面での辞退を希望している一方で若手社員が辞退を伝えた方法は、電話が85%、メールが24%となっています。詳しくは当該記事をご覧ください。
日本経済新聞2019年6月16日(日)

企業からの取り消し

今までは学生側からの辞退を書いてきましたが、逆に内定を承諾した、もしくは内々定を通知された。そんな場合に企業側から後から通知を取り消すことはできるのでしょうか。

ここで上記で説明したように内定か内々定かで多少の違いが生じることになります。

  • 内定の場合…「客観的に合理的理由があり社会通念上相当」な場合に限られる
  • 内々定の場合…内定の場合より広い範囲で認められる

例えば内定の取り消しが認められるケースとしては、内定時に予想できなかった内定者の健康上・経歴上の問題や企業の経営上の問題などがあります。

ただし、経営上の問題と言っても内々定時とは違いかなり厳格に判断されることになるため、そうそう内定の取り消しが認められることはないでしょう。

ただし、法律的には違いが生じれどこのような取り消しは昨今のSNSの普及の効果もあり企業イメージの悪化にも繋がるため基本的には通知の取り消しのような事態は起きないと思われます。

学生の皆さんは人生を決めることなので、辞退に躊躇いがあったとしても自分の決断に自信を持って企業に連絡をするようにしましょう。

【参考にした書籍】

朝倉むつ子・島田陽一・盛誠吾『労働法[第5版]』(2017年,有斐閣)