目次
はじめに|東京エレクトロンもディスコも出てこない半導体の10社
半導体の会社と聞くと、東京エレクトロンやディスコの名前が浮かぶかもしれません。この記事に出てくるのは、その裏で材料、装置、検査、加工を担う10社です。世間一般の知名度は高くありませんが、それぞれの分野でトップ級の地位を持つと会社や調査が示している会社です。
この記事では、売上高、営業利益率、平均年収、ROEの4つの数字をそろえ、10社を半導体をつくる流れの順に見ていきます。先に書いておくと、営業利益率20%超えは6社で、平均年収は最も低い会社でも694万円です。一方、シェアの表現は「世界シェアNo.1」から「トップレベル」まで会社ごとに違い、出どころも会社自身の資料が中心です。就職先として調べている方にも、投資先の候補を探す方にも使えるように、数字の出どころを書きました。
- 業績は各社の直近の本決算(多くは2026年3月期)で、動画の時点の数字のままです。本決算だけを使うのは、四半期のぶれを避け、会社が通期で確定させた数字で比べるためです。
- 上の動画は2026年8月1日に公開したもので、本記事は動画と同じ数字で文章にし、表にまとめました。この回は株価や配当利回りを扱っていません(追記で配当額の修正に触れるだけです)。株価の高い安いは本記事でも判定しません。
- 動画の公開後に、5社(トリケミカル研究所・日本マイクロニクス・山一電機・トーカロ・扶桑化学工業)が通期予想の修正や新規の開示を行い、タツモは中間の業績予想を大きく下げました。数字は差し替えず、該当の節に【2026年8〜10月追記】として足しています。
- 半導体の隠れ優良企業10社の一覧(売上・利益率・年収・ROE)
- 材料・装置・検査・加工という流れの中での各社の位置
- 「世界シェアNo.1」の数字の出どころ
- 日本が半導体の道具と素材で持つ位置
- 動画の公開後に業績予想を変えた会社

【結論】半導体の隠れ優良企業10社の一覧
先に10社の一覧です。社名を押すと、その会社の解説に飛びます。
| 社名 | 強み | 売上高 | 営業利益率 | 平均年収 | ROE |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1章 材料 | |||||
| 扶桑化学工業 4368 |
超高純度コロイダルシリカ | 769億円 | 24.5% | 757万円 | 12.2% |
| トリケミカル研究所 4369 |
成膜用の超高純度化学品 | 239億円 | 24.7% | 837万円 | 15.3% |
| ステラケミファ 4109 |
超高純度フッ化水素酸 | 368億円 | 12.6% | 731万円 | 6.4% |
| 上村工業 4966 |
めっき薬品・装置 | 918億円 | 23.2% | 867万円 | 12.0% |
| 第2章 装置 | |||||
| タツモ 6266 |
塗布・貼り合わせ装置 | 354億円 | 13.5% | 694万円 | 13.3% |
| 芝浦メカトロニクス 6590 |
研磨後洗浄装置 | 880億円 | 17.3% | 953万円 | 20.1% |
| TOWA 6315 |
モールディング装置 | 544億円 | 12.7% | 738万円 | 6.5% |
| 第3章 検査 | |||||
| 日本マイクロニクス 6871 |
メモリ用プローブカード | 702億円 | 23.6% | 786万円 | 18.3% |
| 山一電機 6941 |
検査用ICソケット | 527億円 | 21.9% | 786万円 | 19.5% |
| 第4章 加工 | |||||
| トーカロ 3433 |
溶射加工 | 585億円 | 24.1% | 797万円 | 15.1% |
※直近の本決算(トリケミカル研究所は2026年1月期、タツモ・日本マイクロニクスは2025年12月期、ほかは2026年3月期)。売上高は有価証券報告書ベースの連結。追記の修正は表に反映していません。特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。
営業利益率が20%を超えるのは扶桑化学工業・トリケミカル研究所・上村工業・日本マイクロニクス・山一電機・トーカロの6社です。平均年収は芝浦メカトロニクスの953万円が最も高く、タツモの694万円が最も低くなっています。
この記事の物差し|シェアは言い方と出どころまで見る
「世界シェアNo.1」は、何の製品で、誰の調べかで意味が違います。第三者の調査はTechInsightsの日本マイクロニクスなどに限られ、ほかは会社の資料やサイトの表現です。本記事ではそのまま「会社によると」と書きます。
- 平均年収:有価証券報告書の提出会社単体。従業員数:連結です。
- シェアの表現:会社の資料・サイトの言い方です。比べられる統一された数字ではありません。
- 開示の確認:記事作成時点(2026年11月1日)までの開示は株探の一覧で確かめました。これからの決算(中間または第3四半期)は、芝浦メカトロニクス・山一電機・トーカロ11月5日、TOWA 11月6日、上村工業11月11日、ステラケミファ・日本マイクロニクス11月12日、タツモ11月13日の予定です(株探の表示)。
業界の中での立ち位置を調べるなら、業界の主要企業を一覧できる本が手元にあると早いです。毎年8月頃に新しい版が出ます。
日本は道具と素材で世界を握る
動画では0:40からの部分です。米国半導体工業会(SIA)によると、2025年の世界半導体売上高は約7,917億ドルで、前年比25.6%増と過去最高でした。牽引役は生成AI向けの投資です。
日本はチップの量産競争では台湾や韓国に主役の座を譲りましたが、経済産業省の資料(2025年12月)によると、製造装置の日本企業のシェアは28%で米国に次ぐ世界2位、材料は約48%で世界1位です。
半導体づくりは、ウェーハに回路を作り込む前工程と、チップを切り分けて包み、仕上げる後工程に分かれます。前工程では塗る、焼き付ける、洗うための装置と薬品が、後工程では切る、封止する、検査するための装置と部材が必要です。

第1章|材料の4社
扶桑化学工業(4368)|磨くための超高純度シリカと、食品用の果実酸の二刀流
動画では2:00からです。
シェアの言い方:公式サイトで「トップシェア」。リンゴ酸とともにニッチ市場で世界トップクラス
数字:営業利益率24.5%、ROE12.2%
| 業績(2026年3月期) | 売上769億円・営業利益率24.5%・ROE12.2% |
|---|---|
| 平均年収 | 757万円 |
強み|食品と半導体
半導体ウェーハを鏡面に磨くCMPスラリーの主原料を手がけ、クエン酸やリンゴ酸など食品用の果実酸も主力です。
動画の後の追記
【2026年10月追記】10月30日の中間決算は売上455.96億円(前年同期比+20.9%)、営業利益132.94億円(同+36.4%)でした。通期の予想を修正し、売上930億円(前期比+20.9%)・営業利益280億円(同+48.5%)としています。
ひとこと
BtoB素材で一般にはほとんど知られていない、隠れ優良企業らしい会社だと思います。
トリケミカル研究所(4369)|313人で売上239億円、微細化で使用量が増える材料
動画では2:59からです。
数字:売上は前期比+26.3%、営業利益率24.7%
追記:動画の後に通期予想を大きく上方修正
| 業績(2026年1月期) | 売上239億円(+26.3%)・営業利益率24.7%・ROE15.3% |
|---|---|
| 平均年収 | 837万円 |
強み|先端材料
微細化や3D化が進むほど使用量が増える材料です。少ない人数でこの規模を稼いでいます。
動画の後の追記
【2026年8月追記】8月31日、今期(2027年1月期)の予想を売上295億円・営業利益74.5億円(従来270億円・60億円)に引き上げました。理由は生成AIを中心とした旺盛な需要と中国・台湾向けの出荷です。経常利益以下は韓国の関連会社の好調(持分法の利益)でも増えています。
ひとこと
少ない人数の会社ですが、先端化に伴って材料の重要性が増す工程を担っています。
ステラケミファ(4109)|超高純度フッ化水素酸のパイオニア、純度は12N
動画では3:53からです。
シェアの言い方:会社の資料で国内外トップレベル
数字:自己資本比率74.6%。営業利益率12.6%は10社で控えめ
| 業績(2026年3月期) | 売上368億円・営業利益率12.6%・ROE6.4% |
|---|---|
| 平均年収 | 731万円 |
強み|桁違いの精製技術
純度は12N、つまり99.9999999999%という精製技術を自社で確立しています。
会社の数字
収益性は10社の中では控えめですが、財務は厚い会社です。第1四半期(8月6日発表)は売上+10.9%、営業利益+1.6%で予想の修正はなく、中間決算は11月12日の予定です。
ひとこと
代替が難しい素材を静かに支えている会社だと思います。
上村工業(4966)|創業170年超のめっき、読み方は「うえむら」
動画では4:49からです。
シェアの言い方:HDD基板向け無電解ニッケルめっきプロセスで国内トップシェア(会社資料)
数字:営業利益率23.2%、自己資本比率83.6%
| 業績(2026年3月期) | 売上918億円・営業利益率23.2%・ROE12.0% |
|---|---|
| 平均年収 | 867万円 |
強み|一気通貫
半導体パッケージ基板向けのめっき薬品にも強みがあります。
会社の数字
第1四半期(8月7日発表)は売上+29.6%、営業利益+27.0%で、予想の修正はありません。中間決算は11月11日の予定です。
ひとこと
知名度と実力の差が大きい1社だと思います。
第2章|装置の3社
タツモ(6266)|幅広いプロセス機器の岡山の会社、中間は検収遅れで大きく減益
動画では5:50からです。
シェアの言い方:液晶カラーフィルター用スリットコーターで世界でも高いシェア
注意:動画の後に中間の業績予想を大きく引き下げ
| 業績(2025年12月期) | 売上354億円・営業利益率13.5%・ROE13.3%(前の期の急成長の反動で減益) |
|---|---|
| 平均年収 | 694万円(10社で最も低い) |
動画の後の追記
【2026年8月追記】8月5日に中間の業績予想を下げ、8月10日の中間決算は売上126.84億円(前年同期比−24.4%)、営業利益1.23億円(同−95.1%)でした。理由は出荷済み装置の検収遅れ、検収が長引く装置の評価減、原価の増加です。通期の予想(売上355億円・営業利益36億円)は変えていません。下半期への偏りが大きい計画になっています。
強みと課題
アドバンスドパッケージ向けの半導体製造装置を中心に事業を進めていると会社は説明しています。
ひとこと
動画の「2桁の利益率を確保」は2025年12月期の話です。通期の計画に届くかは、下半期の検収次第だと思います。
芝浦メカトロニクス(6590)|旧東芝系、年収は10社で最高の953万円
動画では6:48からです。
シェアの言い方:研磨後洗浄装置で世界シェアNo.1(当社調べ)
数字:ROE20.1%は10社で最高
| 業績(2026年3月期) | 売上880億円・営業利益率17.3%・ROE20.1%。2期連続の増収増益 |
|---|---|
| 平均年収 | 953万円(10社で最高) |
強み|前工程と後工程
前工程と後工程の両方を手がける中堅です。2023年8月に東芝グループが保有株を売却して資本関係は解消されています。
会社の数字
第1四半期(8月6日発表)は売上−7.0%、営業利益−29.9%で、予想の修正はありません。中間決算は11月5日の予定です。
ひとこと
財務も待遇も、中堅装置メーカーの中で高い水準だと思います。
TOWA(6315)|モールディング装置で世界No.1、HBM大手3社に納入
動画では7:41からです。
シェアの言い方:世界シェアNo.1(会社)。中期経営計画で世界シェア59%からの向上
注意:2026年3月期は増収ながら営業利益−22.1%
| 業績(2026年3月期) | 売上544億円・営業利益率12.7%・ROE6.5% |
|---|---|
| 平均年収 | 738万円 |
減益の理由
新装置INNOMS初号機の先行コストなどが理由です。生成AI向けの積層メモリ、HBMの大手3社すべてに装置を納入しています。
動画の後の数字
第1四半期(8月6日発表)は売上161.83億円(前年同期比+100.3%)、営業利益22.12億円(前年同期は赤字)で、予想の修正はありません。中間決算は11月6日の予定です。
ひとこと
個別に詳しく書いた記事もあります。TOWAは隠れ優良企業といえるのかをあわせてどうぞ。
第3章|検査の2社
日本マイクロニクス(6871)|メモリ用プローブカードで2015年の調査開始以来の首位
動画では8:26からです。
シェアの言い方:メモリ用で世界シェアNo.1(TechInsights 2025年調べ)。10社で数少ない第三者の調査
数字:売上+26.1%、営業利益率23.6%
| 業績(2025年12月期) | 売上702億円(+26.1%)・営業利益率23.6%・ROE18.3% |
|---|---|
| 平均年収 | 786万円 |
強み|HBMの検査需要
HBMの検査需要が追い風です。
動画の後の追記
【2026年8月追記】8月12日に今期(2026年12月期)の通期予想を初めて出し、売上1,038億円・営業利益314億円、年間配当178円(前期95円)としました。理由は生成AIに関連したメモリ市場の拡大と生産能力の増強です。
ひとこと
会社は業績予想を短い期間で出してきたので、数字が動きやすい点は頭に入れておきたいと思います。
山一電機(6941)|検査用ICソケットの専業大手
動画では9:22からです。
シェアの言い方:世界トップクラスのシェア(会社)
数字:売上+16.3%、営業利益+40.5%
| 業績(2026年3月期) | 売上527億円・営業利益率21.9%・ROE19.5% |
|---|---|
| 平均年収 | 786万円 |
強み|繰り返し使う部品
検査工程で使われる部品で、半導体の生産に応じて継続的な需要があります。
動画の後の追記
【2026年8月追記】8月5日、通期の予想を売上658億円・営業利益150億円(従来600億円・130億円)に引き上げ、配当予想も修正しました。理由はスマートフォン向けテストソケットやメモリ向けバーンインソケット、AI関連を含むデータセンター向けコネクタの好調です。
ひとこと
中間決算は11月5日の予定です。
第4章|加工の1社
トーカロ(3433)|溶射加工の国内シェアNo.1、装置メーカー各社の裏方
動画では10:09からです。
シェアの言い方:国内シェアNo.1。国内の溶射受託市場で4割超(会社資料)
数字:営業利益率24.1%、ROE15.1%
| 業績(2026年3月期) | 売上585億円・営業利益率24.1%・ROE15.1% |
|---|---|
| 平均年収 | 797万円 |
強み|耐プラズマコーティング
半導体製造装置のチャンバー内部品に耐プラズマコーティングを施しています。
動画の後の追記
【2026年8月追記】8月5日、通期の予想を売上685億円・営業利益167億円(従来650億円・150億円)に、年間配当を86円から92円に引き上げました。理由は半導体関連を中心とした売上の好調です。
ひとこと
中間決算は11月5日の予定です。

10社を見るときに確かめたい3つの点
動画の最後(11:00から)のまとめに、記事として3つの点を足しました。
| 確かめる点 | 10社で見ると |
|---|---|
| ① 半導体の波 | 動画の後に上方修正が続きましたが、半導体は波のある業界です。TOWAは2026年3月期に営業減益、タツモは中間で大きく減益でした |
| ② シェアの出どころ | 第三者の調査は日本マイクロニクスのTechInsightsなど一部です。「当社調べ」「トップレベル」は会社の言い方です |
| ③ 働く環境 | 年収は決算資料で分かりますが、評価や社風は会社で差があります。口コミや面接での確認もおすすめします |
まとめ|年収と利益率だけでなく、どの工程の会社かで見る
半導体を支える10社を見てきました。要点は3つです。
- 営業利益率20%超えは6社、平均年収は694万円から953万円です(直近の本決算)。
- それぞれの工程でトップ級とされる会社ですが、シェアの多くは会社自身の言い方です。
- 動画の公開後の開示は分かれました。トリケミカル研究所、山一電機、トーカロ、扶桑化学工業、日本マイクロニクスは通期予想の修正や新規の開示を行い、タツモは中間で大きく減益でした。
名前を知らない会社でも、どの工程で何をつくっているかが分かると、半導体業界の見え方が変わると思います。
見えないところで世界の首位を握る会社を、シェアの出どころから読んだこちらの記事もどうぞ。
⚠️ 注意:この記事は個人の感想で、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。この回は株価や配当利回りを扱っていません。シェアの表現は各社の資料や調査の言い方で、統一された数字ではありません。業績予想・配当予想は各社の会社予想で、今後の決算発表で変わることがあります。投資や就職の判断は、最新の開示を確かめたうえでご自身で行ってください。

