目次
はじめに|親は子会社を、抱えるのか、取り込むのか、手放すのか
イオン、三菱商事、NTTドコモ、キヤノン。誰もが知る大企業の傘下で上場を続ける子会社が、JPXのデータで2026年9月時点に244社あります。親からTOBを受けて、翌日に株価が大きく動いた例もあります。2021年のキャンドゥは+21.6%、同じ年の日本精線は+16.1%でした。
この記事では、親の議決権が50〜66.7%、直近期の営業利益が黒字、平均年収650万円超を優先という基準で244社から選んだ12社を、10の親グループの「親子上場の銘柄10選」として取り上げます。親がTOBのときに金融庁へ出す公開買付届出書と有価証券報告書を読むと、親の考え方が見えてきます。先に書いておくと、今回の12社に、近くTOBがあると言える会社はありません。親の書類で上場の維持や完全子会社にしないことが読める会社が5社あり、TOBを当てにして読む記事ではありません。
- 株価と、株価から計算する指標(PER・PBR・配当利回り)は2026年9月18日終値です。動画の公開から日がたっていますが、数字は動画の時点のままです。業績は本決算の数字だけを使っています(四半期のぶれを避け、会社が通期で確定させた数字で比べるため)。
- 上の動画は2026年9月23日に公開したもので、本記事は動画と同じ数字で文章にし、表にまとめました。ただしインテージホールディングスだけ、動画の業績は1年前の2025年6月期でした。本記事は2026年6月期の本決算の数字を足しています。
- 動画の公開後に、日本精線と住石ホールディングスが業績予想と配当予想を上方修正し、リアルゲイトが本決算と中期経営計画を発表しました。ほかの社も中間決算などが出ています。数字は差し替えず、該当の節に【2026年10月追記】として足しています。12社に親からのTOBの開示はありません。
- 親子上場の銘柄12社と親会社の一覧
- 親の届出書に書かれた「上場維持」「取り込む理由」の読み方
- 親が抱える・取り込む・手放すを見分ける3つの点
- 各社の業績、平均年収、株価指標
- TOBで株価が動いた前例と、当てにしにくい理由

【結論】親子上場の銘柄12社の一覧
先に12社の一覧です。親と議決権の比率、親グループ向けの売上の比率、PBR、親の書類から読める方向を並べました。社名を押すと、その会社の解説に飛びます。
| 社名 | 親(議決権) | 親グループ向け売上 | PBR | 書類から読める方向 |
|---|---|---|---|---|
| 第1章 上場のまま抱える方向 | ||||
| キャンドゥ 2698 |
イオン 51.06% | 10%未満 | 4.83倍 | 「連結子会社化を目的」 |
| イオンファンタジー 4343 |
イオン 60.61% | 開示なし | 6.90倍 | 店の6割がイオンの施設 |
| 日本精線 5659 |
大同特殊鋼 50.63% | 23.4% 大同興業経由 |
1.02倍 | 「上場を維持」が望ましい |
| 若築建設 1888 |
麻生 50.67% | 0% | 0.89倍 | 「完全子会社化の検討は行っておりません」 |
| インテージHD 4326 |
NTTドコモ 51.0% | 開示なし | 2.25倍 | 「上場を維持」が最適 |
| 第2章 親が売り出す方向 | ||||
| リアルゲイト 5532 |
サイバーエージェント 63.81% | 重要な取引なし | 3.54倍 | 親からの売出し等 |
| visumo 303A |
ソフトクリエイトHD 62.5% | 兄弟会社へ12.4% | 1.69倍 | 親への一部売出し要請 |
| 第3章 親の方向が読みにくい | ||||
| 住石HD 1514 |
麻生 57.01% | 0% | 1.33倍 | 調達の安定化が目的 |
| 日産車体 7222 |
日産自動車 50.0% | 98.2% | 0.67倍 | 親の工場再編の途中 |
| キヤノンMJ 8060 |
キヤノン 52.1% | 開示なし 親から仕入れる側 |
1.95倍 | 同じ親がキヤノン電子を取り込んだ |
| 日本食品化工 2892 |
三菱商事 60.7% | 15.6% | 0.76倍 | 同じ親が三菱食品を取り込んだ |
| 南海辰村建設 1850 |
NANKAI 62.19% | 31.9% | 0.62倍 | ROICで評価される側 |
※2026年9月18日終値。PBRが1倍を下回るのは南海辰村建設・日産車体・日本食品化工・若築建設の4社です。「読める方向」は親や会社の書類の文言にもとづく当チャンネルの読み方で、将来の親の判断を示すものではありません。特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。
親は12社で3つの扱いに分かれるのではなく、「抱える」と書いている親も、別の子会社は取り込んでいます。イオンはイオンディライトを、大同特殊鋼は東北特殊鋼を完全子会社にしました。だから親の名前だけでは決まらず、その子会社についての一文を読む必要があります。
この記事の物差し|親の一文、親向けの売上、PBR
親の扱いを読むときに、親の書類の一文、親向けの売上の比率、PBRの3つを見ます。業績は各社の直近の本決算で、PERと配当利回りは会社予想です。この回の動画では各社の過去5年のPBRの幅を計算していないので、「割安」「割高」とは判定せず、PBRの数字だけを示します。
- 株価・時価総額・PER・PBR・配当利回り:株探の2026年9月18日終値。PERと利回りは会社予想です。
- 業績・平均年収:各社の直近の本決算と有価証券報告書です。決算期は会社で違います(キャンドゥ・イオンファンタジー2月、インテージHD 6月、リアルゲイト9月、キヤノンMJ 12月、ほかは3月)。リアルゲイトは2025年9月期で、10月に出た2026年9月期は追記に書きました。
- 議決権の比率:有価証券報告書の値です。TOB届出書の値と異なる場合があり、該当の節に書きました。
- 開示の確認:記事作成時点(2026年10月31日)までの開示は株探の一覧で確かめました。これからの決算は、インテージHD 11月4日、若築建設11月9日、日産車体11月11日の予定です(株探の表示)。
業界の中での立ち位置を調べるなら、業界の主要企業を一覧できる本が手元にあると早いです。毎年8月頃に新しい版が出ます。
親子上場とは/12社の選び方
動画では1:02からの部分です。親子上場とは、上場企業が別の上場企業の議決権の過半数を握りながら、その子会社もそのまま上場を続けている状態です。少数株主の利益が親の意向で左右されかねないとして、東証や投資家から長年問題視され、TOBによる完全子会社化や株式交換での解消が近年相次いでいます。
244社から、次の基準で12社に絞りました。
- 親が過半数を握るが完全子会社ではない(議決権50〜66.7%)
- 直近期の営業利益が黒字
- 平均年収650万円超を優先(12社中8社が超え、4社は届いていません)
知名度は会社によって差があり、キャンドゥのように誰もが知る会社も入っています。動画は親グループごとの順で話していますが、本記事は親の方向ごとに3つの章に分けました。

第1章|上場のまま抱える方向の5社
親や親の届出書が、上場の維持や、完全子会社にしないことを書いている会社です。
キャンドゥ(2698)|イオンのTOBは連結子会社化まで、利益率は目標に遠い
動画では2:31からです。
親の一文:2021年のTOB届出書に「完全子会社化ではなく、連結子会社化を目的に検討」
見どころ:営業利益率は5期とも2%未満で、目標の5%には遠い
| 親(議決権) | イオン 51.06%/親向け売上10%未満 |
|---|---|
| 業績(2026年2月期) | 売上871億円・営業利益率1.76%・ROE4.2% |
| 営業利益率(5期) | 1.32→0.58→0.30→1.02→1.76% |
| 平均年収 | 473.9万円 |
| 株価/時価総額 | 3,250円/545億円 |
| PER/PBR/利回り | 115倍/4.83倍/0.52% |
親の考え方
イオンは「親子上場に関する考え方」を有価証券報告書に書く、12社の親で唯一の会社です。主要な連結子会社18社が上場しています。一方で2025年には、グループ内の需要を集約する目的でイオンディライトを完全子会社にしました。外に売る会社は上場のまま、グループ内で使う会社は取り込む、という使い分けだと思います。
会社の課題
会社自身もフリーキャッシュフローの増大を継続課題と書いています。
【2026年10月追記】10月9日に中間決算を発表しました。売上447.43億円(前年同期比+3.2%)、営業利益9.97億円(同−24.7%)でした。
ひとこと
イオンの方針からは上場のまま抱える可能性が高い会社だと思います。業績での株価の上昇も大きくは期待しにくく、動画では、TOBを当てにするには少しリスクが高い印象とお話ししました。
イオンファンタジー(4343)|店の6割がイオンの施設、家賃で親にお金が入る関係
動画では4:40からです。
親との関係:直営1,292店のうち806店がイオングループのSC内。家賃と共益費は年約70億円
見どころ:ROEは5期でマイナス34%台からプラス38.8%まで振れる
| 親(議決権) | イオン 60.61%/親向け売上の開示なし |
|---|---|
| 業績(2026年2月期) | 売上933億円・営業利益率6.55%・ROE38.8% |
| 営業利益率(5期) | −5.66→1.17→4.39→4.98→6.55% |
| 平均年収 | 496.8万円 |
| 株価/時価総額 | 2,733円/541億円 |
| PER/PBR/利回り | 18.0倍/6.90倍/0.73% |
親の考え方
売上のおよそ7%が親グループへの賃料として出ていきます。親から見れば、取り込まなくても毎年お金が入ってくる関係です。イオンは有価証券報告書で「子会社の経営の自主性・独自性を重視」と書き、2002年に自ら上場させた子会社です。
会社の課題
ROEの振れの背景は自己資本の薄さです。会社が掲げる自己資本比率の目標は15.5%です。「収益は国内市場に大きく依存」とも書いています。
【2026年10月追記】10月13日に中間決算を発表しました。売上523.74億円(前年同期比+12.3%)、営業利益41.56億円(同+14.5%)で、自己資本比率は13.0%です。業績予想と配当予想は変えていません。
ひとこと
上場のまま抱える可能性が高い会社だと思います。PBR6.9倍はすでに高く、株価は業績の安定次第と感じます。動画では、TOBより先に自己資本比率の回復を確認したい、とお話ししました。
日本精線(5659)|親が51%で止めた理由が届出書に書いてある
動画では6:53からです。
親の一文:「上場を維持した上での連結親子会社関係の維持が望ましい」
前例:2021年12月のTOB発表の翌日に株価は+16.1%
| 親(議決権) | 大同特殊鋼 50.63%/大同興業経由の売上23.4% |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上466億円・営業利益率6.6%・ROE5.11% |
| 営業利益率(5期) | 10.26→8.52→7.91→9.79→6.6% |
| 平均年収 | 762.8万円 |
| 株価/時価総額 | 1,413円/442億円 |
| PER/PBR/利回り | 15.5倍/1.02倍/3.26%(年46円。下の追記で52円に) |
親の考え方
日本精線は大同と競合する素材メーカーからも材料を仕入れていて、完全子会社になると、その競合からの「安定的な素材供給に支障が生じる可能性」がある、というのが届出書の説明です。一方で同じ大同は2026年5月に東北特殊鋼(持分法34.32%)を100%にしました。
会社の目標と追記
中期経営計画でROE8%以上、配当性向50%程度、PBR1倍以上を掲げています。直近は太陽光パネル向け極細線の販売減が響きました。
【2026年10月追記】10月28日、通期の業績予想を売上515億円・営業利益42億円(従来497億円・39億円)に、年間配当を46円から52円に引き上げました。理由はステンレス鋼線の販売数量の増加と、半導体関連向け超精密ガスフィルターの伸びなどです。動画と同じ1,413円で計算すると、利回りは約3.68%です。
ひとこと
親が100%にしない理由を書いた、上場のまま抱える可能性が高い会社だと思います。動画の時点では、配当を受け取りながら持てる印象の一方で、あえて買うかは悩ましい、とお話ししました。これは上方修正の前の見方です。
若築建設(1888)|麻生が買い増しに歯止め、株価はTOB価格より下
動画では11:39からです。
親の一文:「麻生は、当初から完全子会社化の検討は行っておりません」
前例:2026年春のTOBは1株4,455円。12社で唯一、2026年に入って親からTOBを受けた
| 親(議決権) | 麻生 50.67%(TOB後の持ち株は51.05%)/親向け売上0% |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上1,047億円・営業利益率6.3%・ROE8.5%。受注1,279億円(+23.1%)・繰越1,496億円 |
| 営業利益率(5期) | 7.7→7.4→7.3→6.0→6.3% |
| 平均年収 | 877.7万円 |
| 株価/時価総額 | 3,695円/479億円 |
| PER/PBR/利回り | 10.7倍/0.89倍/3.92% |
親の考え方
買付け後の持分は42.63%から51.05%になりました。動画と届出書の説明では、これを超えて持分を増やすには若築建設の書面による承諾が要ると決めていて(届出書の基準は50.10%で、計算の基準が違うと見られます)、親が自分で歯止めをかけた形です。狙いは陸の麻生と海の若築の防災減災の組み合わせです。
弱みと業績
ROEは5期で13.6%から8.5%に下がりましたが、直近は営業利益が27.4%増えました。弱みは資材高と人手不足です。中間決算は11月9日の予定です。
ひとこと
麻生が上場維持を契約で担保した会社だと思います。動画の時点で株価はTOB価格の4,455円を下回り、PBR0.89倍、利回り3.92%で、動画では12社の中で最も注目している会社とお話ししました。ただしTOB価格は2026年春の一度きりの価格で、株価の目安ではありません。
インテージホールディングス(4326)|「上場維持が最適」と書かれた市場調査の最大手
動画では24:59からです。
親の一文:「対象者の上場を維持した上での連結子会社化が最適」
前例:2023年9月のTOBは1株2,400円
| 親(議決権) | NTTドコモ 51.0%/親向け売上の開示なし |
|---|---|
| 業績(2025年6月期・動画の数字) | 売上656億円・営業利益率6.47%・ROE10.73% |
| 業績(2026年6月期・本記事で追加) | 売上671億円(+2.3%)・営業利益57.5億円(+35.6%)・営業利益率8.57%・ROE5.07%。純利益は減損で17億円(−51.4%) |
| 営業利益率(5期) | 7.68→7.72→6.17→5.2→6.47%(動画の5期)→2026年6月期8.57% |
| 平均年収 | 896.9万円(12社で最高・2025年6月期の有報) |
| 株価/時価総額 | 2,004円/810億円 |
| PER/PBR/利回り | 19.1倍/2.25倍/2.50%(2027年6月期の会社予想) |
親の考え方
TOB届出書はドコモの顧客データをインテージの分析力で生かす狙いを書いています。同じドコモは2025年に住信SBIネット銀行とCARTA HOLDINGSを非公開化のためにTOBしていて、インテージだけが上場維持です。
動画の数字の訂正
動画は2025年6月期の数字で話していますが、動画の時点ですでに2026年6月期の決算(8月5日発表)が出ていました。営業利益は伸びた一方、子会社のリサーチ・アンド・イノベーションののれんなどの減損損失17.8億円で純利益は半減し、ROEは5.07%です。会社はROE12%、配当性向50%、累進配当を掲げています。弱みはパネル調査からソリューション提供への転換と人材の確保です。
ひとこと
上場のまま抱える可能性が高い会社だと思います。動画の時点で株価は2023年のTOB価格を下回り、動画では、親の動きとは別に業績と配当の面で注目している会社とお話ししました。これは2026年6月期の減損を踏まえない見方です。

第2章|親が売り出す方向の2社
親が持ち株を売り出す方向だと、会社の有価証券報告書に書かれています。
リアルゲイト(5532)|親とは資本のつながり、売出しの方針も書いてある
動画では14:14からです。
親の一文:有報に「親会社他既存株主からの売出等」で流動性の向上
親から得ているもの:信用。与信力が上がり銀行融資で物件を買えると説明
| 親(議決権) | サイバーエージェント 63.81%/親グループと「重要な取引関係はありません」 |
|---|---|
| 業績(2025年9月期) | 売上98億円・営業利益率10.7%・ROE18.7% |
| 売上(5期) | 38.1→58.4→69.7→79.5→97.9億円 |
| 平均年収 | 697.9万円 |
| 株価/時価総額 | 3,490円/227億円 |
| PER/PBR/利回り | 31.2倍/3.54倍/無配 |
親の考え方
親の側の有価証券報告書に上場子会社への方針はなく、TOBや株式交換の届出もありません。読める材料は子会社側です。物件を買い続ける方針で、会社自身が財務基盤の強化を課題に挙げ、オフィス市況と金利に左右されます。
本決算の追記
【2026年10月追記】10月27日に2026年9月期の決算を発表しました。売上108.77億円(+11.1%)、営業利益15.36億円(+47.3%)、営業利益率14.1%、ROE15.0%です。2027年9月期の予想は売上135億円・営業利益21.6億円で、無配の予想です。同日に中期経営計画2029も発表しました。
ひとこと
取り込まれるより手放される方向の会社だと思います。PER31倍、PBR3.5倍は高く、株価は売上の伸びが続くことを前提にしているように感じます。
visumo(303A)|連結を保てる分だけ持ち、残りは売り出す設計
動画では16:35からです。
親の一文:「連結関係を維持するために必要となる当社株式を継続的に所有」+「親会社への一部売出し要請」
注意:時価総額11.6億円と小さく、PER55倍
| 親(議決権) | ソフトクリエイトHD 62.5%/兄弟会社ecbeingへ12.4% |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上9.7億円・営業利益率8.40%・ROE10.6%。売上は4年で約2.8倍 |
| 平均年収 | 634.4万円 |
| 株価/時価総額 | 567円/11.6億円 |
| PER/PBR/利回り | 55.4倍/1.69倍/無配 |
会社の課題
会社が掲げる経営指標は売上と経常利益の拡大のみで、数値目標の開示はありません。
中間決算の追記
【2026年10月追記】10月30日に中間決算を発表しました。売上6.38億円(前年同期比+44.0%)、営業利益0.16億円(同−69.9%)です。業績予想は変えていません。
ひとこと
取り込みの逆で、手放す方向の会社だと思います。株価は売上の伸びで動くように感じ、動画では、TOBの期待は持たず成長率で判断する印象とお話ししました。
第3章|親の方向が読みにくい5社
親の書類に上場維持の一文がなく、取り込む材料も残す材料もある、あるいは何も読めない会社です。
住石ホールディングス(1514)|営業利益3億円に経常利益28億円、差は豪州の炭鉱の配当
動画では9:05からです。
親の一文:臨時報告書に「石炭調達の安定化」「石灰石の安定的な調達体制の構築」
注意:利益の多くは豪州ワンボ炭鉱の配当。坑内掘りの終了で目標を下げた
| 親(議決権) | 麻生 57.01%/親向け売上0% |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上107億円・営業利益3.29億円(3.1%)・経常利益27.94億円・ROE9.2% |
| 平均年収 | 610.1万円 |
| 株価/時価総額 | 639円/430億円 |
| PER/PBR/利回り | 23.3倍/1.33倍/2.35%(年15円予想。下の追記で20円に) |
親の考え方
麻生は2024年5月に資本業務提携を結び、市場で買い集めて50.01%に達しました(直近の有価証券報告書では57.01%)。麻生は投資先の経営を「投資先の経営陣に委ねる」と書く親です。書かれているのは調達体制をつくるという目的で、直近の有価証券報告書の時点では麻生グループとの取引は立っていません。買い増す理由も手放す理由も読めません。
配当の追記
【2026年10月追記】10月9日、通期の業績予想を売上116億円・経常利益23億円・純利益21億円(従来94億円・18億円・16億円)に、配当を15円から20円に引き上げました(営業利益3億円は据え置き)。中東情勢の緊迫で石炭価格が上がり、ワンボ社からの受取配当金が予想を上回ったためです。動画の「来期は15円に減る予定」は、この修正で変わりました。動画と同じ639円で計算すると、利回りは約3.13%です。
ひとこと
配当が増えても、炭鉱の配当に頼る構造は同じです。坑内掘りの終了という道筋は有価証券報告書に書かれているので、石炭の市況とあわせて見たいと思います。
日産車体(7222)|売上の98%が日産、親の工場再編の途中
動画では18:31からです。
親との関係:売上の98.2%が日産。価格は「総原価を勘案して交渉の上決定」
注意:無配。湘南工場はサービス部品の拠点に転換する
| 親(議決権) | 日産自動車 50.0% |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上4,038億円・営業利益141億円(3.51%)・ROE3.83% |
| 営業利益率(5期) | −1.64→1.43→0.33→1.47→3.51% |
| 平均年収 | 753.8万円 |
| 株価/時価総額 | 928円/1,257億円 |
| PER/PBR/利回り | 9.0倍/0.67倍/無配 |
親の考え方
日産は「車両生産工場数を2027年度までに17から10に削減」する方針です。日産車体も、2027年3月の商用車の生産終了後に湘南工場をサービス部品の拠点に転換すると書いています。湘南工場の転換で減損26億円と、約800人分の事業構造改革引当金21億円を計上しました。
取り込む材料
日産の有価証券報告書には「国内証券市場に上場している連結子会社は日産車体のみ」とあります。事業の一体性の高さは、親が取り込む側の材料になりうると思います。
ひとこと
無配で、株価は親の生産計画次第で動くように感じます。PBR0.67倍は数字として低いですが、親の再編の途中にある会社だという点とあわせて読む必要があると思います。
キヤノンマーケティングジャパン(8060)|同じ親がキヤノン電子を取り込んだ、ただしPBRの状況は違う
動画では20:37からです。
親との関係:キヤノン製品を「日本国内において独占的に販売する権利」
同じ親の前例:2025年12月にキヤノン電子を完全子会社化。理由にPBR1倍割れと上場維持コスト
| 親(議決権) | キヤノン 52.1%/親からの商品仕入1,554億円 |
|---|---|
| 業績(2025年12月期) | 売上6,798億円・営業利益率8.56%・ROE10.4% |
| 営業利益率(5期) | 7.19→8.49→8.61→8.12→8.56% |
| 平均年収 | 849.4万円 |
| 株価/時価総額 | 3,689円/8,195億円(2026年4月に1→2分割) |
| PER/PBR/利回り | 17.3倍/1.95倍/2.58% |
親の考え方
キヤノン電子のTOB届出書は「上場を維持することの意義は乏しい」と書いていますが、キヤノンMJへの言及はありません。取り込む理由も残す理由も両方あると思います。
弱みと追記
弱みはペーパーレス化でプリンターと複合機保守の売上が減っていることです。
【2026年10月追記】10月26日に第3四半期決算を発表しました(10月29日に監査法人のレビュー付きを再提出)。第3四半期までの売上5,076.70億円(前年同期比+3.2%)、営業利益469.15億円(同+22.8%)で、通期の予想は変えていません。
ひとこと
キヤノン電子のときに挙げられた「PBR1倍割れ」とは状況が違います(PBR1.95倍)。親の判断は分かりませんが、TOBの上乗せは期待しすぎない方がよいと感じます。
日本食品化工(2892)|原料も販売も三菱商事、取り込む理由はそろう
動画では22:47からです。
親との関係:販売98億円に対し、原料などの購入は257億円。三菱商事系から借入70億円
同じ親の前例:2025年5月に三菱食品(50.11%)を1株6,340円で完全子会社化
| 親(議決権) | 三菱商事 60.7%/親向け売上15.6% |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上630億円・営業利益率1.99%・ROE4.0% |
| 営業利益率(5期) | 2.97→5.48→3.84→1.91→1.99% |
| 平均年収 | 759.9万円 |
| 株価/時価総額 | 4,870円/241億円 |
| PER/PBR/利回り | 15.4倍/0.76倍/3.08% |
親の考え方
三菱食品のTOB届出書は「経営資源を迅速かつ柔軟に相互活用できる体制」が最善と書いていますが、日本食品化工への言及はありません。原料の入口も製品の出口も三菱商事が握り、親から見れば取り込む理由がそろっている会社だと思います。
課題と追記
中期計画のROE目標は5〜6%と控えめで、原料高を「製品販売価格に転嫁できない場合」を筆頭のリスクに書いています。
【2026年10月追記】10月30日に中間決算を発表しました。売上336.84億円(前年同期比−0.1%)、営業利益16.37億円(同+4.6%)で、予想は変えていません。
ひとこと
PBR0.76倍はキヤノン電子の例のように取り込みの理由になりうると思いますが、稼ぐ力が弱く、業績での株価上昇は大きく期待しにくいと感じます。
南海辰村建設(1850)|2001年から資本の動きなし、PERは12社で最も低い7.4倍
動画では27:15からです。
親との関係:NANKAI(旧南海電気鉄道)からの受注146億円、売上の31.9%
親の一文:「ROICを活用した事業ポートフォリオマネジメント」
| 親(議決権) | NANKAI 62.19%(直接57.73%+間接4.46%) |
|---|---|
| 業績(2026年3月期) | 売上458億円・営業利益率6.21%(営業利益+19.4%)・ROE11.3% |
| 営業利益率(5期) | 5.19→4.35→3.86→4.5→6.21% |
| 平均年収 | 751.2万円 |
| 株価/時価総額 | 433円/122億円 |
| PER/PBR/利回り | 7.4倍/0.62倍/1.85% |
親の考え方
2001年に親が第三者割当増資を引き受けて連結子会社にして以来、資本の動きの届出はありません。親は2026年4月に鉄道事業を分社化して株式会社NANKAIとなり、持株会社としてROICで各事業を評価すると書いています。
弱みと追記
弱みは資材高を請負金額に反映しにくいことです。
【2026年10月追記】10月29日に中間の利益予想を上げ、10月30日の中間決算は売上214.40億円(前年同期比−4.4%)、営業利益11.62億円(同+1.7%)でした。通期の予想(営業利益25億円・−12.0%)は、受注動向や資材・労務費の先行きが不透明だとして据え置いています。
ひとこと
PBR0.62倍に対してROEは11%台と、12社の中で対比が目立つ数字です。親の再編で位置づけが変わるかも含めて見ておきたいと思います。利回りは1.85%と控えめです。

親の扱いを見分ける3つの点
動画の最後(29:25から)でまとめた点です。親の扱いは、届出書を読むと次の3つに分かれます。
| 親の扱い | 書類に書かれた例 |
|---|---|
| ① 上場のまま抱える | イオン「主要連結子会社18社が上場」/大同→日本精線「上場を維持した上での連結親子会社関係の維持が望ましい」/麻生→若築「当初から完全子会社化の検討は行っておりません」/ドコモ→インテージ「上場を維持した上での連結子会社化が最適」 |
| ② 取り込む | イオン→イオンディライト「グループ内の需要集約」/キヤノン→キヤノン電子「PBR1倍割れ・上場維持コスト」/三菱商事→三菱食品「経営資源の相互活用」/大同→東北特殊鋼(特別委員会が完全子会社化を合理的と答申) |
| ③ 手放す | ソフトクリエイトHD→visumo「親会社への一部売出し要請」/サイバーエージェント→リアルゲイト「親会社他既存株主からの売出等」 |
見分けるときに見るのは次の3点です。
- 届出書や有価証券報告書に「上場維持」の一文があるか
- 親向けの売上の比率がどれだけ高いか(0%の若築建設・住石HD、10%未満のキャンドゥから、98.2%の日産車体まで)
- PBRが1倍を割っているか(キヤノン電子では理由の一つになりました)
まとめ|TOBを当てにせず、親の書いた一文を読む
親子上場の10グループ、12社を見てきました。要点は3つです。
- TOBで株価が動いた前例はありますが(キャンドゥ+21.6%、日本精線+16.1%)、どちらも完全子会社化ではなく、上場は続いています。
- 同じ親でも、子会社ごとに扱いが違います。親の名前ではなく、その子会社についての一文を読む必要があります。
- 動画の公開後の開示では、親からのTOBはありませんでした。日本精線と住石ホールディングスは上方修正、リアルゲイトは増収増益の本決算と、業績の側で動きがありました。
TOBの可能性は、あくまで業績の上の話です。親がどう動くかは誰にも分からないので、会社そのものの配当、稼ぐ力、成長を先に確かめるのがよいと思います。
PBRが1倍を下回る会社を、安い理由から読んだこちらの記事もどうぞ。
⚠️ 注意:この記事は個人の感想で、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。株価と指標は2026年9月18日終値で計算していて、日々変わります。親会社の判断を予想するものではなく、TOBが行われることを示すものでもありません。業績予想・配当予想は各社の会社予想で、今後の決算発表で変わることがあります。投資の判断は、最新の開示を確かめたうえでご自身で行ってください。

