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はじめに|欧州の高配当株は、手取りと配当の決まり方まで見る
S&P500や全世界株の投資信託を積み立てていると、外貨の資産はほとんど米ドルになります。そこで欧州の配当株が気になっても、「日本の証券会社で買えるのか」「現地の税金でどれくらい減るのか」「また無配にならないか」といったところで止まりがちです。
この記事では、SBI証券と楽天証券の両方で買えて、配当を米ドル以外の通貨で決めていて、5期続けて増配している欧州の5社を取り上げます。一社ずつ、配当の決め方、配当を支えているもの、配当利回りがその会社自身の過去5年と比べてどのあたりにあるかを見ていきます。
- 株価と、株価から計算する指標(時価総額・PER・PBR・配当利回り)、過去5年の配当利回りの位置、円換算は2026年10月23日終値です。円換算のレートは1ドル156.83円・1ポンド209.65円・1スイスフラン190.02円・1ユーロ175.56円です。
- 業績は2025年12月期の本決算の数字だけを使っています(四半期のぶれを避け、会社が通期で確定させた数字で比べるため)。
- 上の動画は2026年10月27日に公開したもので、本記事は動画と同じ数字で文章にし、表にまとめました。動画の公開日以降に出た第3四半期の発表は、該当する会社の節に【2026年10月追記】で足しています。
- 配当利回りはすべて税引き前です。
- SBI証券・楽天証券で買える、5期連続増配の欧州の5社の一覧
- 買い方(預託証券)と、国ごとに違う現地の税金、為替の見方
- 各社の配当の決め方と、配当を支えているもの
- 過去5年の配当利回りで見た、5社の株価の位置

【結論】欧州の高配当株5社の一覧
先に5社の一覧です。国と配当の通貨、連続増配の長さ、配当利回り、現地で先に引かれる税金、利回りがその会社自身の過去5年の中でどのあたりにあるかを並べました。社名を押すと、その会社の解説に飛びます。
| 社名 | 国・配当の通貨 | 連続増配 | 配当利回り 税引き前 |
現地の税 国内法の税率 |
利回りの位置 過去5年の中で |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1章 10期以上、増配が続く2社 | |||||
| ブリティッシュ・アメリカン・タバコ BTI |
英国・ポンド | 10期 | 5.53% | 0% | 低い側(株価は高い側) |
| ノバルティス NVS |
スイス・スイスフラン | 29回 会社の表記 |
2.89% | 35% | 低い側(株価は高い側) |
| 第2章 2020年に配当が止まった・減ったあと、5期連続の金融3社 | |||||
| ロイズ・バンキング・グループ LYG |
英国・ポンド | 5期 | 3.63% | 0% | 低い側(株価は高い側) |
| ナットウエスト・グループ NWG |
英国・ポンド | 5期 | 5.18% | 0% | 真ん中あたり |
| エイゴン AEG |
オランダ・ユーロ | 5期 | 5.47% | 15% | 真ん中あたり |
※2026年10月23日終値。配当利回り=2025年度の1株配当(現地通貨)÷本市場(ロンドン・スイス・アムステルダム)の株価。会社は今期の配当の予想を出していません。特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。
5社に共通するのは、1株配当が2021〜2025年度の5期続けて増えていることです。ただ、中身は同じではありません。第1章の2社はコロナの2020年度も増配しましたが、第2章の3社は2020年に当局の要請などで配当を止めたり減らしたりしていて、「5期連続」はそこからの回復を含んだ数字です。
また、ノバルティスは10月9日の時点では利回りが3%を超えていましたが、その後の株価の上昇で10月23日には2.89%になっています。
この記事の物差し|株価は「その会社自身の過去5年の配当利回り」
日本株の記事では過去5年のPBRと比べていますが(PBR1倍割れの割安株9選|財務と稼ぐ力で絞った9社を「安い3つの理由」で読む【2026年9月時点】)、銀行・保険・医薬が混ざるこの5社はPBRやPERで物差しがそろいません。そこで、この記事では配当利回りで比べます。
2021年10月〜2026年9月の各月末の株価(本市場)に対する、その時点で発表済みの直近年度の1株配当の利回りと比べて、10月23日の値が低い側か、真ん中あたりかを見ています(当チャンネル計算)。利回りが低いほど、株価は過去と比べて高い側にあるということです。「計算上の株価」は、今の年間配当を過去5年の利回りの中央値で割った値で、株価の予想ではありません。
- 5社の選び方:①SBI証券と楽天証券の両方の取扱銘柄の一覧で確かめた欧州の会社50社(2026年10月12日時点。欧州の会社をすべて数え上げたものではありません)→②配当を米ドル以外の通貨で決めて、配当を出している27社→③2021〜2025年度の5期続けて1株配当が増えていて(現地通貨・特別配当を除く)、配当利回りが税引き前で3%以上(10月9日の株価で判定)の6社→④配当を利益やフリーキャッシュフローでまかなえているか、国と業種の散らばりを見て5社。
- PER=株価÷2025年度の実績の1株利益(会社の予想がないため)、PBR=株価÷1株純資産。どちらも本市場の株価で計算しています(ノバルティスは決算がドル表示のためドルどうし)。計算上の株価のドル換算は、10月23日の米国市場と本市場の終値の比によります。
- 株価の動き:米国市場のドル建て。年初から=2025年12月末の終値比、直近1年の高値=日中の高値、5年=5年前の終値比(Yahoo! Finance)。ドル建ての株価には、現地の通貨とドルの為替の動きも混ざります。
- 銀行・保険は営業利益率の代わりに、のれんなどを除いた自己資本に対する利益率(有形自己資本利益率)や、会社が主に見せる利益を載せています。
- 業績の見通しの修正は、記事作成時点(2026年10月31日)までに確かめた範囲で、各社の節に書きました。ブリティッシュ・アメリカン・タバコは半期ごとの決算と見通しの更新で第3四半期の決算発表はなく、エイゴンは2026・2027年は半期ごとの開示だけとしています。
欧州の会社のライバルには、日本の大手も出てきます。業界の主要企業と順位を見渡すなら、一覧できる本が手元にあると早いです。毎年8月頃に新しい版が出ます。

買い方・現地の税金・為替|5社に入る前に
動画では00:21からの部分です。動画では細かい条件を概要欄に回しましたが、記事ではここにまとめます。
買い方|米国株の画面から、ドルで買う
5社とも米国の取引所(ニューヨーク証券取引所)に上場していて(預託証券=ADRなど)、SBI証券・楽天証券の「米国株式」の画面からティッカーで検索できます(2026年10月12日に両社の取扱銘柄の一覧で確認)。欧州の取引所(ロンドン・パリ・フランクフルトなど)の株は、両社とも取扱いがありません。
- 1単位の中身:BTI=1株、NVS=1株、LYG=4株、NWG=2株、AEG=1株。LYGとNWGは、1単位の株価と本市場の1株の株価を比べるときに注意が要ります。
- 配当の受け取り:会社が現地の通貨で決めた額を、支払いのときの為替で米ドルに替えて支払われます。預託証券の手数料(配当1回につき1単位あたり数セント)が引かれることがあります。
- NISAの成長投資枠での取扱いは、各証券会社の画面でご確認ください。
現地の税金|国によって手取りが変わる
配当は、①会社のある国で税金が先に引かれ(現地の源泉税)、②残りに日本の税金20.315%がかかります(NISAは②がかかりません)。①の税率は国ごとに違います。
| 国(会社) | 現地の源泉税 国内法の税率 |
日本との租税条約の限度税率 | 現地の税を引いた後の利回りの目安 当ブログ計算 |
|---|---|---|---|
| 英国(BTI・ロイズ・ナットウエスト) | 0% | 10% | 5.53%・3.63%・5.18% |
| オランダ(エイゴン) | 15% | 10% | 約4.6% |
| スイス(ノバルティス) | 35% | 10% | 約1.9% |
※2026年10月23日終値。目安は、税引き前の利回りに国内法の税率をそのまま当てた計算です。ここから日本の税金(NISAを除く)や預託証券の手数料がさらにかかります。実際に引かれる税率と手続きは、証券会社と口座の種類で変わることがあり、この記事では各社の実際の明細までは確かめられていません。配当の明細と、証券会社・税務署の案内でご確認ください。
課税口座では、確定申告で外国税額控除を使える場合があります(条約の限度税率まで)。NISAでは外国税額控除は使えません。条約の限度税率を超えて引かれた分を取り戻すには相手の国への還付の請求が必要で、証券会社が代行しない場合があり、個人での手続きは手間がかかります。
為替|通貨を分ければ安心、とまでは言えない
円から見た株価と配当は、ポンド・スイスフラン・ユーロと円の関係で動きます。ドル建ての株価には、現地の通貨とドルの為替も混ざります。
では、ドル以外で配当が決まる株を持てば、値動きは打ち消し合うのでしょうか。過去20年(2006〜2025年)を見ると、円に対してドルと逆の向きに動いた年は、ユーロが6年、ポンドが5年でした(欧州中央銀行の参照レートから当チャンネル計算)。同じ向きに動いた年のほうが多いです。2008年はドルが18.8%、ポンドが40.3%、どちらも円に対して下がっています。

第1章|10期以上、増配が続く2社
第1章は、コロナの2020年度も増配した2社です。動画では01:07からの部分です。
- ブリティッシュ・アメリカン・タバコ:数量が減っても値上げで利益率約4割。10期連続の増配
- ノバルティス:スイスの新薬メーカー。会社の言葉で29回連続の増配
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)|本数は年8%減でも値上げで利益率4割、利回り5.53%
配当の決め方:累進配当(減らさず、維持するか増やす)。長く続けられる利益の65%が目安で、年4回
株価の位置:利回り5.53%で、過去5年の低い側(株価は高い側)。2025年度は配当を、和解金の支払いが重なってフリーキャッシュフローでまかなえていない
| 市場・従業員 | ニューヨーク証券取引所(1単位=1株)・本市場ロンドン・47,797人(2025年末) |
|---|---|
| 売上高(5期) | 256.8→276.6→272.8→258.7→256.1億ポンド(2025年度は約5兆4,000億円) |
| 営業利益率(5期) | 39.8→38.1→△57.7→10.6→39.0% |
| 今期の会社の見通し | 為替の影響を除いて売上+3〜5%・調整後営業利益+4〜6%(どちらも幅の下のほう)。調整後EPSは+5〜8%の真ん中あたり(2026年7月30日。9月29日も変更なし) |
| 1株配当 | 217.8→230.88→235.52→240.24→245.04ペンス(2021〜2025年度)。コロナの2020年度も増配で10期連続。直近3期は毎年+2.0% |
| 株価/時価総額 | 59.48ドル/約1,287億ドル=約20兆円(ロンドンの株価4,432ペンス) |
| PER/PBR | 12.6倍(実績)/2.09倍 |
| 配当利回り | 5.53%(税引き前・1単位あたり約3.29ドル) |
| 利回りの過去5年 | 5.18%(2026年2月)〜10.06%(2023年12月)・中央値7.21%=低い側(今より低かった月は10%)。計算上の株価は約46ドル |
| 配当性向/還元 | 調整後の利益に対して66.3%→69.6%(方針は65%)。自社株買いは2025年11.1億ポンド・2026年13億ポンドの計画 |
| 財務 | 調整後の純有利子負債÷EBITDA 2.55倍(会社の目標2.0〜2.5倍の外。2026年末に範囲内の見通し)・格付けBBB+ |
| 株価の動き | 年初から+5.1%/直近1年の高値67.30ドル(2026年5月)から−11.6%/5年+64.4% |
強み|数量が減っても、値上げで売上を保つ
売上の78.9%は紙巻きたばこなどで、電子たばこ・口に含む袋・加熱式の新しい製品は14.1%です(残りは伝統的な口に含む製品など)。売上の45.0%が米国で、営業利益でも約半分(49.4%・当チャンネル計算)を米国で稼いでいます。2025年度は紙巻きたばこの数量が約8%減りましたが、値上げなどで約9%補い、売上は為替を除いて1.0%増えました。会社も、毎年の値上げを利益を高める主な要因のひとつに挙げています。設備投資は売上の2.5%(当チャンネル計算)です。
配当は続くか|利益率と現金が別の動きをした2年
営業利益率は2025年度に39.0%ですが、2023年度は米国の紙巻きたばこのブランドなどの減損(ブランド230億ポンド・のれん43億ポンド。現金の出ない費用)で営業赤字、2024年度はカナダの訴訟の和解の引当(62億ポンド)で10.6%でした。
配当の面では、2025年度の会社のフリーキャッシュフロー(配当前)40.5億ポンドが配当52.4億ポンドに届いていません。カナダの和解金25.6億ポンドの支払いが重なったためで、これを除くと66.1億ポンドと配当を上回ります。競合のフィリップ モリス インターナショナル(売上406億ドル)や日本たばこ産業(JT)と比べると、JTは配当性向75%を目安にしていて、2021年度に154円から140円へ減配しました。同じたばこでも、配当の決め方が違います。
株価の位置とひとこと
2026年7月30日の中間決算の発表から8月31日までに約13%下げました。同じ期間の英国の株価指数FTSE100は−0.8%で、会社固有の動きです。過去5年の利回りの中央値での計算上の株価は約46ドルで、数値の上では今の株価は中央値と比べると高い側にあります。
数量の減少や訴訟があるからこそ利回りが5%台にある、という見方もできると思います。動画での個人的な見方は、配当を受け取り続ける目的なら長期で持つ候補、というものでした。確かめるのは、2027年2月の本決算で配当をフリーキャッシュフローでまかなえたかです。
ノバルティス(NVS)|発足から29回連続の増配、ただ利回りは2.89%でスイスの税は35%
動画では05:30からです。
配当の決め方:1株の年間配当をスイスフラン建てで増やしながら支払う方針。年1回で、配当性向の目標はない
株価の位置:利回り2.89%で過去5年の低い側(株価は高い側)。スイスの税35%を引くと約1.9%
| 市場・従業員 | ニューヨーク証券取引所(1単位=1株)・本市場スイス・75,267人(2025年末) |
|---|---|
| 売上高(5期) | 427.8→422.1→454.4→503.2→545.3億ドル(2025年度は約8兆6,000億円。後発薬の事業を除いた数字) |
| 営業利益率(5期) | 23.5→18.8→21.5→28.9→32.4% |
| 今期の会社の見通し | 為替の影響を除いて売上は1桁台前半の増加、調整後の営業利益は1桁台前半の減少(動画の時点=7月の見通し。10月に修正=下の追記) |
| 1株配当 | 3.10→3.20→3.30→3.50→3.70フラン(2021〜2025年度)。会社の表記で1996年の発足から29回連続 |
| 株価/時価総額 | 151.12ドル/約2,883億ドル=約45兆円(スイスの株価128.00フラン) |
| PER/PBR | 21.0倍(実績)/6.25倍 |
| 配当利回り | 2.89%(税引き前・1単位あたり約4.48ドル※)。スイスの源泉税35%を引くと約1.9% |
| 利回りの過去5年 | 2.68%(2026年2月)〜4.33%(2022年9月)・中央値3.71%=低い側(今より低かった月は2%)。計算上の株価は約118ドル※ |
| 配当性向/還元 | 調整後のEPSに対して50.8%→52.0%(当チャンネル計算)。配当はフリーキャッシュフローの51.7%。自社株買いは2025年89億ドル |
| 財務 | 純有利子負債は2025年末219億ドル→2026年6月末394億ドル(アビディティの買収 約120億ドル)・格付けAa3/AA− |
| 株価の動き | 年初から+9.6%/直近1年の高値170.46ドル(2026年2月)から−11.3%/5年+78.0%(2023年10月に切り離した事業の株の分は含まない) |
※10月23日は、スイスの市場が閉まったあとに米国市場で株価が下げ、米国市場と本市場の終値の比が為替より約2.6%低くなりました。1単位あたりの配当は3.70フランを当日の為替(1フラン約1.21ドル)で換算した値です(動画の画面は終値の比で換算した約4.37ドル)。計算上の株価は動画と同じ終値の比による値で、為替で換算すると約121ドルです。
強み|特許がある間は、値段が保たれる
特許がある間は、同じ成分の薬をほかの会社が売れず、値段が保たれます。売上原価は売上の25.1%、研究開発費は20.5%で、営業利益率は32.4%まで上がりました。製品別では心不全の薬エンレストが14.2%、乾癬などの薬コセンティクスが12.2%で、上位4つの薬で43.3%を占めます。顧客は薬の卸や薬局チェーン、病院、政府や保険の支払い機関で、販売先の上位2社で売上の約3割を占めますが、社名は公表されていません。競合はロシュ(売上615億フラン)や米国のファイザーなどで、日本の武田薬品工業(4兆5,057億円)と比べると売上は約2倍です。
なぜ今期の利益が重いか|エンレストなど3つの薬の特許切れ
会社自身も、特許が切れると売上と利益は大きく減ると書いています。エンレストは米国で2025年7月から後発薬が出ていて、プロマクタ・タシグナを合わせた3製品は2025年度の売上の19.2%です。中期では、会社は2025〜2030年に売上が年平均5〜6%増えるとしています。
株価の位置とひとこと
2026年9月8日には、買収した新薬候補の試験が目標に届かなかったと発表し、スイスの株価は1日で約11%下げました。それでも、過去5年の利回りの中央値での計算上の株価は約118ドルで、数値の上では今の株価は高値圏にあります。
29回続けて配当を増やしてきた実績と格付けの高さで、会社の中身は5社でいちばん安心感があると思います。ただ、動画での個人的な見方は、配当が目的なら今の株価は高いと感じるので、今すぐ検討する銘柄ではない、というものでした。確かめるのは、2027年2月の本決算で特許切れのあとも利益を保てているかです。

第2章|2020年に配当が止まった・減ったあと、5期連続で増配している金融の3社
第2章は金融の3社です。動画では09:32からの部分です。ロイズとナットウエストは英国の当局の要請で2019年度の期末配当を取りやめ、2020年の中間配当も見送りました。エイゴンは欧州の当局の要請で2019年度の期末配当を取りやめたうえ、2020年度は会社の判断で引き下げました。銀行や保険では、会社が配当を続けたくても、当局の要請で止まることがあります。
- ロイズ・バンキング・グループ:累進配当を掲げる、英国の個人2,800万人の銀行
- ナットウエスト・グループ:利益の約50%を配当にする、英国の法人に強い銀行
- エイゴン:名前はオランダ、事業の約7割は米国の生命保険。2028年に米国の会社になる予定
ロイズ・バンキング・グループ(LYG)|累進配当と固定金利の運用、ただ自動車ローンの補償が未確定
配当の決め方:累進的で、続けられる普通配当の方針。コロナ前の水準を超えたのは2025年度
株価の位置:利回り3.63%で過去5年の低い側(株価は高い側)
| 市場・従業員 | ニューヨーク証券取引所(1単位=4株)・本市場ロンドン・60,061人(2025年末) |
|---|---|
| 株主に帰属する利益(5期) | 53.6→33.9→49.3→39.2→42.0億ポンド(2025年度は約8,800億円) |
| 有形自己資本利益率(5期) | 13.8→9.8→15.8→12.3→12.9%(2025年度は自動車ローンの引当を除くと14.8%) |
| 今期の会社の見通し | 有形自己資本利益率16%超・純金利収入149億ポンド超(4月に上方修正)。その先は2028年に18%超・2030年に約20% |
| 1株配当 | 2.00→2.40→2.76→3.17→3.65ペンス(2021〜2025年度。2018年度3.21・2019年度1.12・2020年度0.57)。2026年の中間配当は1.58ペンス(前年1.22ペンスから+29.5%) |
| 株価/時価総額 | 5.33ドル(1単位=4株)/約580億ポンド=約12兆円(ロンドンの株価100.7ペンス) |
| PER/PBR | 14.4倍(実績)/1.42倍 |
| 配当利回り | 3.63%(税引き前・1単位あたり約0.19ドル) |
| 利回りの過去5年 | 1.12%(2022年1月=配当を再開した直後)〜6.01%(2023年10月)・中央値4.40%=低い側(今より低かった月は25%)。計算上の株価は約4.4ドル |
| 配当性向/還元 | 50.3%→52.1%(当チャンネル計算)。自社株買いは2025年度分 最大17.5億ポンド、2026年7月に中間で最大10億ポンド(初めて) |
| 株価の動き | 年初から+0.6%/直近1年の高値6.34ドル(2026年2月)から−15.9%/5年+97.4% |
強み|預金と住宅ローンに根ざした、金利の収入
収入の約7割(69.0%・当チャンネル計算)は貸出と預金の金利の差から得る収入で、利益の約半分が個人向け、4割弱が法人向けです。預金4,965億ポンドが貸出4,815億ポンドを上回っています。競合はナットウエストやバークレイズ、HSBCです。
なぜ金利が下がり始めても見通しが上向きか|固定金利の運用の置き換わり
預金や自己資本の一部を、数年単位の固定金利で運用する仕組みがあります(structural hedge。住宅ローンの金利とは別の運用枠です)。低い金利の時代に固定した分が満期を迎え、高い金利で運用し直されています。この運用の収入は2023年度34億、2024年度42億、2025年度55億ポンドと増え、会社は2026年に70億超、2027年に80億ポンド超と見込んでいます。一方で、自動車ローンの手数料をめぐる問題で合計19.5億ポンドの引当を積んでいて、補償の額は確定していません。
株価の位置とひとこと
2026年2月3日〜3月27日にロンドンの株価は19.7%下げましたが、同じ期間にナットウエストは22.2%、バークレイズは23.8%下げていて(FTSE100は−3.4%)、英国の銀行株がそろって下げた動きです。過去5年の利回りの中央値での計算上の株価は約4.4ドルで、数値の上では今の株価は中央値より高い位置にあります。
配当を増やす姿勢ははっきりしていると思います。ただ、利回りは5社の中では低めで、補償の額も決まっていません。動画での個人的な見方は、今は様子見でした。確かめるのは、2027年1月28日の本決算の期末配当と、補償の制度の行方です。
ナットウエスト・グループ(NWG)|配当は利益の約50%、前の年の約1.5倍で利回り5.18%
動画では13:46からです。
配当の決め方:株主に帰属する利益の約50%。累進ではなく利益に連動する
株価の位置:利回り5.18%で過去5年の真ん中あたり
| 市場・従業員 | ニューヨーク証券取引所(1単位=2株)・本市場ロンドン・約59,000人 |
|---|---|
| 収入(5期) | 104.3→131.6→147.5→147.0→166.4億ポンド |
| 株主に帰属する利益(5期) | 29.5→33.4→43.9→45.2→54.8億ポンド(2025年度は約1兆1,500億円) |
| 有形自己資本利益率(5期) | 9.4→12.3→17.8→17.5→19.2% |
| 今期の会社の見通し | 収入 約179億ポンド・有形自己資本利益率19%超(2026年7月に引き上げ。買収の分を含む) |
| 1株配当 | 10.5→13.5→17.0→21.5→32.5ペンス(2021〜2025年度・普通配当。2022年度は別に特別配当16.8ペンスと株式併合があり、配当サイトでは2023年度に減ったように見えることがあります)。2026年の中間配当は12.0ペンス(+26.3%) |
| 株価/時価総額 | 16.80ドル(1単位=2株)/約499億ポンド=約10兆円(ロンドンの株価627.4ペンス) |
| PER/PBR | 9.2倍(実績)/1.32倍 |
| 配当利回り | 5.18%(税引き前・1単位あたり約0.87ドル) |
| 利回りの過去5年 | 1.24%(2022年1月)〜7.58%(2023年10月)・中央値4.72%=真ん中あたり(今より低かった月は73%)。計算上の株価は約18.4ドル |
| 配当性向/還元 | 40.2%→47.8%。自社株買いは2024年度22億ポンド(政府からの買い戻し)・2025年度15億ポンド |
| 株価の動き | 年初から−4.0%/直近1年の高値19.42ドル(2026年8月)から−13.5%/5年+142.8% |
強み|法人の預金と貸出
会社の表記では、法人の預金で約25%、法人の貸出で約20%のシェアです(個人の当座預金は16.5%、住宅ローンは12.5%)。収入の77.1%が金利の収入で、部門では法人向けが収入と利益の半分強、個人向けが約4割です。2008〜09年に英国政府が普通株の約70%を持つ形になり、2025年5月30日にゼロになりました。2017年度までの9年間は無配でした。
なぜ利益率が19%まで上がったか|預金の利ざや
会社は、預金の利ざやが広がったためと説明しています。預金の約3割は利息を払わない預金で、こうした預金などを固定金利で運用しています。ロイズと同じく、低い金利で固定した分が高い金利に置き換わっている途中で、この運用の収入は2021年度14億ポンドから2025年度46.7億ポンドに増えました。会社は、ここからの上積みを2026年に15億ポンド超、2027年にさらに10億ポンド超と見込んでいます。ロイズと比べると、総資産は7,146億ポンドと約4分の3ですが、税引前利益は77億ポンドとロイズの67億ポンドを上回ります。
配当が前の年の約1.5倍になったのは、配当に回す割合を約40%から約50%に引き上げたことも効いています(2025年度から)。逆に言えば、金利が下がって利益が減れば、配当も減る決め方です。
株価の位置とひとこと
この5年で、ロンドンの株価が高値から2割以上下げた局面が4回あり(2023年2〜11月は−43.2%)、値動きは比較的激しいです。2026年は資産運用会社エブリン・パートナーズの買収(企業価値27億ポンド)で自己資本の比率が13.2%に下がり、7月には新しい自社株買いの発表はありませんでした。計算上の株価は約18.4ドルで、今の株価は過去5年の真ん中あたりです。
累進配当ではないからこそ利回りが5%台にある、という見方もできると思います。動画での個人的な見方は、5社の中でも持ってみたいと感じる会社、というものでした。確かめるのは、2027年2月の本決算で収入と配当が見通しどおりに増えているかです。
エイゴン(AEG)|赤字の年も配当を増やせた理由と、2028年の米国への移転
動画では17:54からです。
配当の決め方:続けられる配当を払い、業績が許せば増やす。2026・2027年は1株配当を年5%超増やす目標
株価の位置:利回り5.47%で過去5年の真ん中あたり。2028年に米国の会社になる予定で、配当の通貨と税金は未定
| 市場・従業員 | ニューヨーク証券取引所(1単位=1株)・本市場アムステルダム・15,304人 |
|---|---|
| 会社が主に見せる利益(5期) | 19.06→18.02→14.98→14.85→17.02億ユーロ(2025年度は約3,000億円) |
| 純利益 | 2022年度△5.40・2023年度△1.99・2024年度6.76・2025年度9.80億ユーロ(2023年度から保険の新しい会計基準) |
| 今期の会社の説明 | 2026年の目標はすべて達成するか上回る見込み(2026年8月20日) |
| 1株配当 | 0.17→0.23→0.30→0.35→0.40ユーロ(2021〜2025年度。2018年度0.29・2019年度0.15・2020年度0.12)。2026年の中間配当は0.21ユーロ(前年0.19ユーロから+10.5%) |
| 株価/時価総額 | 8.10ドル/約111億ユーロ=約2兆円(アムステルダムの株価7.308ユーロ) |
| PER/PBR | 12.4倍(実績)/1.49倍 |
| 配当利回り | 5.47%(税引き前・1単位あたり約0.44ドル)。現地の税15%を引くと約4.6% |
| 利回りの過去5年 | 2.40%(2022年1月)〜6.42%(2026年3月)・中央値5.04%=真ん中あたり(今より低かった月は83%)。計算上の株価は約8.8ドル |
| 配当性向/還元 | IFRSのEPSに対して94.6%→67.8%(当チャンネル計算)。自社株買いは2025年5.5億ユーロ・2026年約5.8億ユーロ |
| 財務 | 持株会社の手元資金13.11億ユーロ・負債48.5億ユーロ・格付けBBB+/Baa1・ソルベンシー比率184%(2025年末) |
| 株価の動き | 年初から+5.1%/直近1年の高値9.61ドル(2026年8月)から−15.7%/5年+54.3% |
強み|米国の中間層の家庭と、中堅の会社の退職金
顧客は米国の中間層の家庭と中堅の会社です。会社が主に見せる利益では、米州が事業の合計の約65%を占めます。2026年4月には英国の事業をスタンダード ライフへ売却すると発表しました(20億ポンド)。競合はプルデンシャル ファイナンシャル(総収益約608億ドル)やリンカーンなどです。
なぜ赤字の年にも配当を増やせたか|配当のもとは持株会社に届く現金
会計上の純利益は2022年度(オランダの事業の売却に伴う減損18億ユーロ)と2023年度(米国の古い契約の再保険に伴う損失など)が赤字でした。それでも配当を増やせたのは、配当のもとが会計上の利益ではなく、事業会社から持株会社に届く現金から持株会社の費用を引いた額(会社の定義のフリーキャッシュフロー)だからです。この現金は7.29→7.80→7.15→7.59→8.29億ユーロと安定していて、2025年度の配当の支払い5.96億ユーロはその約72%でした。
ただ、配当と自社株買いを合わせた11.06億ユーロは133%で、a.s.r.株の売却と手元資金で埋めています。英国の事業を売ると、この現金の土台は約8億から約6.8億ユーロに減る見込みです。
2028年に米国の会社へ|株価の位置とひとこと
10月8日の臨時株主総会で会社の籍と本社を米国に移すことが承認され、2028年1月ごろに米国の会社トランスアメリカになる予定です。移転のあと配当をどの通貨で決めるのか、会社はまだ示していません。現地の税金も、移転のあと米国とオランダの両方の源泉税がかかるおそれをリスクとして会社自身が書いています(会社は解消をめざして当局と協議するとしていますが、保証はないとしています)。
この5年で高値から15%以上下げた局面が4回あり、移転を決めた2025年12月10日は1日で10.1%下げました。計算上の株価は約8.8ドルで、今の株価は過去5年の真ん中あたりです。「ドル以外の通貨で配当が決まる株」という今回の軸から外れる可能性があるので、動画での個人的な見方は今は様子見でした。確かめるのは、2027年2月18日の本決算の期末配当と、移転後の配当についての説明です。

欧州の配当株を持つときに確かめたい3つの点
動画の最後(22:02から)でも触れた点を、5社に当てはめて整理します。
| 確かめる点 | 5社で見ると |
|---|---|
| ① 配当はどう決まるか | 累進はBTI・ロイズ。利益連動はナットウエスト。ノバルティスは「増やしながら」、エイゴンは「業績が許せば増やす」。会社は今期の配当の予想を出しておらず、方針は会社が変えられる |
| ② 手元にいくら残るか | 英国は現地の税0%、オランダ15%、スイス35%。為替は、ドルと同じ向きに動いた年のほうが多い |
| ③ どんな時に止まるか | 銀行・保険は2020年に当局の要請などで止まった・減った。ナットウエストは2017年度まで9年間無配。BTIは2025年度の配当をフリーキャッシュフローでまかなえていない |
| 会社 | 配当利回り | PER/PBR | 直近の増配 2025年度 |
2026年の中間配当 |
|---|---|---|---|---|
| BTI | 5.53% | 12.6倍/2.09倍 | +2.0% | 年4回払い |
| ノバルティス | 2.89% | 21.0倍/6.25倍 | +5.7% | 年1回払い |
| ロイズ | 3.63% | 14.4倍/1.42倍 | +15.1% | +29.5% |
| ナットウエスト | 5.18% | 9.2倍/1.32倍 | +51.2% | +26.3% |
| エイゴン | 5.47% | 12.4倍/1.49倍 | +14.3% | +10.5% |
※株価は2026年10月23日終値。利回りは税引き前。増配率は現地通貨の1株配当から計算。

まとめ|欧州の高配当株は「5期連続」の中身で分けて見る
SBI証券・楽天証券で買える、5期連続増配の欧州の5社を見てきました。要点は3つです。
- 「5期連続」の中身は2種類。BTIとノバルティスは10期以上続く増配で、金融の3社は2020年に止まった・減ったあとの回復を含みます。
- 手取りは国で変わる。現地の税は英国0%・オランダ15%・スイス35%(国内法の税率)で、ノバルティスは税を引くと約1.9%です。
- 株価は過去5年の配当利回りで、低い側(株価は高い側)3社・真ん中あたり2社(2026年10月23日終値)。動画での個人的な見方は、持ってみたいと感じる会社1社(ナットウエスト)、長期で持つ候補1社(BTI)、今は様子見2社(ロイズ・エイゴン)、今すぐ検討する銘柄ではない1社(ノバルティス)でした。
高い利回りは分かりやすい入り口です。ただ、その配当がどう決まり、何に支えられ、いくら手元に残るかまで見て、はじめて比べられると思います。
日本株で、純資産を基準に配当を決めるDOEを掲げる会社を読んだ記事もあります。→ DOE高配当株6選|5期減配なし、計算上の下限と今の配当の距離で読む減配しにくさ【2026年10月時点】
米国株で、配当より事業の伸びを見る会社を読んだ記事もあります。→ AIデータセンター関連の米国株4選|営業利益率15%超の裏方が高値から18〜50%安、距離と実力を決算書で読む【2026年9月時点】
日本株で、割安の理由を財務と稼ぐ力から読んだ記事もどうぞ。
⚠️ 注意:この記事は個人の感想で、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。株価・指標・為替は2026年10月23日終値で計算していて、日々変わります。配当利回りは税引き前で、現地の税金・日本の税金・預託証券の手数料は含みません。外国の株式には、株価の変動のほか、為替の変動、現地の税金、会社の方針の変更などのリスクがあります。証券会社の取扱いは2026年10月12日時点の確認です。投資の判断は、最新の開示を確かめたうえでご自身で行ってください。

